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アメリカを代表するプレミアムブランドといえばフォードが擁する「リンカーン」とGMグループの「キャデラック」だ。
しかし、フォードの日本撤退に伴って前者は日本での正規販売を終了している。したがって、日本で正規輸入モデルを買えるアメリカンプレミアムブランドは「キャデラック」のみという状況だ。
そんなキャデラックには「XT」というSUVシリーズがあり、以前からミドルサイズの「XT5」やラージサイズの「XT6」が日本でも販売されていた。加えて、2021年1月から加わったのが“初のコンパクトSUV”を自称する「XT4」である。
文/工藤貴宏、写真/GM
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XT4は北米No.1のRAV4級サイズにガチで投入した“刺客”
2021年1月、キャデラックに新たなSUVモデル「XT4」が追加された(全長4605×全幅1875mm×全高1625mm)
それぞれの違いは、車体サイズを比べれば一目瞭然だ。XTシリーズの長男に位置づけられるXT6は全長5060×全幅1960mm(ちなみに「ナビゲーター」はさらに大きく北米仕様の全長が5382mm)、XT5は4855×1915mm、そして末っ子となるXT4は4605×1875mmとなっている。
実はこの4605×1875mmというボディサイズには大きな意味がある。2020年の北米におけるSUV売上ランキングをみると、1位はトヨタ RAV4で、以下ホンダ CR-V、日産 ローグ、トヨタ ハイランダー、スバル フォレスター、マツダ CX-5と続く。5位のハイランダーを除けば、全長4.5m強のモデルが名を連ねているのだ。
アメリカではもっと大きなSUVが売れているイメージがあるが、意外にも売れ筋モデルのボディはそれほど大きくない。XT4もまさにそのサイズであり、アメリカにおけるSUVの売れ筋ボディサイズで作られているのだった。
同車は単にXTシリーズの末っ子という立ち位置のみならず、本気で売ろうと仕掛けたキャデラックの重要な戦略車なのだ。
キャデラック 新型XT4の価格は、各グレードごとにプレミアム570万円、スポーツ640万円、プラチナム670万円となっている
もちろん、キャデラックはプレミアムブランドだから上記のモデルとは価格も含めて少し立ち位置が違う。
具体的にいえば、BMW X3(全長4720~4730mm)、メルセデスベンツ GLC(4670~4680mm)、アウディ Q5(4680~4685mm)あたりがベンチマークとなってくる。
日本人の感覚としては、プレミアムブランドの「レクサスNX」に近い感覚と思えば間違いない。それが、XT4のアメリカでのポジションだ。そして何を隠そう、XT4のボディサイズは日本市場でも大きな意味がある。
BMW、ベンツより「お手頃」なキャデラック XT4
RAV4のサイズは、全長4600mm×全幅1855mm×全高1685mm。XT4と同じくらいのサイズである
“コンパクトSUV”を自称するXT4だが、日本でのサイズ感はミドルクラス。RAV4やCX-5、CR-V、そしてフォレスターのほか、日本でたくさん売れた日産エクストレイルや大ヒットモデルとなっているトヨタ ハリアーとも同じサイズ感だ。
つまり、日本でも多くの人にとって自然に受け入れられるサイズということになる。これは日本市場で販売台数を伸ばそうとするうえで、大きなポイントなのだ。
もちろん、競合するのは日本車ではなくX3、GLC、Q5などプレミアムブランドということになり、前出のとおりドイツのライバルに比べると少し小さいので扱いやすいサイズと言える(そのぶんエバりが効かないという人もいるかもしれないが、そういうひとはワンサイズアップのXT5を買うのがいいだろう)。
そのうえで、ドイツ勢のプレミアムブランドに対して大きく有利なポイントがある。それは価格。Q5は649万円、X3は675万円、そしてGLCは708万円なのに対して、XT4は570万円からと安いのだ。ちなみにXT4の駆動方式は全車とも4WDである。
XT4の競合車は、BMWX3(675万円)、メルセデスベンツGLC(708万円)、アウディQ5(649万円)。価格は、競合車よりもXT4のほうが安い
「価格なんて気にせずクルマを選べる」といううらやましい人にとってはどうでもいい話だが、Dセグメント輸入車のプレミアムSUVを狙っていて、少しでも安く買いたいというのなら積極的に選ぶ意味があるのがXT4といっていい。
もちろん、そんな少し後ろ向きな理由でなくても、「街であまり見かけない」とか、「知り合いとカブる心配がなさそう」なんていうアプローチで選択するのも悪くない。
シートやドアトリムのステッチは、機械ではなく人の手で縫い上げている。ウルトラビューパノラミックサンルーフも採用(グレード:プラチナ)
エッジの効いたスタイルは個性的だし、贅を尽くしたインテリアはアメリカンラグジュアリーの世界観にどっぷりと浸れる。
本革シートを全車に標準装備するほか、ウッドパネルは本物の杢目材、加飾は“金属調”ではなく本物の金属、室内各所の手が触れる部分にはふんだんにレザーを採用と、インテリアの仕立ては欧州プレミアムのライバル以上に高品質だ。変化球のプレミアムSUVとして、かなり魅力的な商品といっていい。
新型XT4は日本向けのキャデラックか?
さて、ここからはもう少し踏み込んで日本市場への適性を見てみよう。230psを発生する4気筒ガソリンターボエンジンは、排気量が2.0Lだから自動車税が手頃なのがいい。今どきのアメ車はエンジン排気量も小さめなのだ。
正確にいえば、ハイオクではなくレギュラーガソリン仕様(フォード・エクスプローラーの日本に最後のモデルなどはターボエンジン車もレギュラー対応だった)なら完ぺきだったけれど、そこは大目に見よう。
プレミアムブランドだけに先進安全装備も充実し、全方位モニターは全車に採用。「プラチナム」や「スポーツ」ではACC(先行車追従型クルーズコントロール)や後方のオートマチックブレーキも組み込まれている。
今回、最新の地図データをストリーミングできるナビが搭載。不安視されていたナビが改良された
そのうえ注目したいのがナビだ。これまでGMは日本向けモデルのナビに苦労していたが、XT4ではGMジャパンがゼンリンデータコムと共同開発した完全車載通信ナビ「クラウドストリーミングナビ」を全車に搭載。
通信を活用して常に最新の地図をストリーミング表示しつつ、トンネル内などでGPS測位ができない環境でも自社位置を失わない道案内してくれるのだから頼もしい。
ついにGMの日本向けモデルからナビに関しての不安が払しょくされたのは、大きなニュースだ。
左ハンドルさえ気にならなければ日本のユーザーにもオススメ
XT4は左ハンドル仕様のみとなっている。そして、ドライブモードでは、ツーリング・AWD・スポーツ・オフロードの4種類がある
ただ、問題ははやり左ハンドル。XT4には右ハンドルの設定はないのは、ウィークポイントとして否めない。それは事実である。
とはいえ、10年ほど左ハンドル車を所有していた筆者としていえるのは、運転自体はすぐに慣れるということ。そして高速道路の料金所も、ETCがあるからまったく困らないということ(わずらわしいのは駐車場ゲートとETC非対応の有料道路)。自身の経験からも、左ハンドルに対して絶対にやめたほうがいいとは思わない。
左ハンドルが不安……という人に対しては、「問題ないから買えばいい」とまでは言えないけれど、クルマが気に入ったなら買って後悔しないだろうと伝えたい。世の中には左ハンドルを好んで乗っている人もいるくらいなのだから。
むしろ、「左ハンドルしかないから日本へ導入しない」ではなく、左ハンドルしかないけれど好きな人に買って欲しいという意気込みで日本への輸入を決めたGMジャパンの判断に拍手を送りたい。
クルマ好きのひとりとして、日本で買えるクルマの選択肢が広がったことは素直に喜ばしいと思う。
というわけで結論。左ハンドルさえ気にならなければ、キャデラックXT4は日本のユーザーにもオススメできる。
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