フォルクスワーゲングループ(Volkswagen Group)は4月20日、ギリシャ政府と合意した地中海アスティパレア島を「EVアイランド」化する計画に基づいて、最初の個人向けEVとなる『ID.3』を島民に納車した、と発表した。
◆島のバスをEVによるライドシェアに置き換える
アスティパレア島は南エーゲ海の小さな島で、面積は約100平方kmだ。人口は約1300人で、毎年約7万2000人の観光客が訪れる。アスティパレア島の公共交通機関は現在、2系統のバスのみで、島のエネルギー需要も化石燃料によって、まかなわれている。
アスティパレア島は今後数年間で、持続可能な観光地のパイオニアになることを目指している。ギリシャ政府は、国家エネルギーと気候計画の枠組みの中で、この変革を支援している。
プロジェクトの中心にあるのは、現在のバスサービスを、EVのライドシェアリングを含めたデジタルモビリティサービスに置き換えることだ。現在のレンタカー事業の一部を地元のパートナーと連携し、EVや電動バイクによるシェアリングサービスに転換する。これだけでも、島内の車両を大幅に減らすことが可能になる。約1000台のEVで、約1500台の内燃機関搭載の自動車を置き換えていく。
フォルクスワーゲン ID.3◆ID.3の1回の充電での航続は最大550km
フォルクスワーゲングループは今回、ギリシャ政府と合意した地中海アスティパレア島をEVアイランド化する計画に基づいて、最初の個人向けEVのID.3を島民に納車した。これは、公用車として同島の警察当局に納車された『ID.4』に続くものだ。
「ID.ファミリー」として、最初に登場したのが、フルコネクテッド機能を備えたコンパクトEVのID.3だ。ロングホイールベースと短いオーバーハングが特長で、内燃エンジンが搭載されていないため、前後アクスルを車両のより外側に配置することを可能にした。
ID.3には、EV専用に新開発された「MEB」(モジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス)車台を使用する。モーターがギアボックスとともにリアアクスルに組み込まれ、後輪を駆動する。モーターからリアアクスルへのパワーの伝達は、1速ギアボックスを介して行われる。
ID.3では、バッテリーが他のコンポーネントとともに、車両のフロア下に効率よく搭載される。蓄電容量に応じて、45kWhの「ピュア」、58kWhの「プロ」、77kWhの「プロS」の3種類の基本グレードが設定される。新しい燃費基準のWLTPサイクルにおいて、330~550kmの航続を実現している。
島民に納車された最初のID.3は、エントリーグレードのピュアだ。蓄電容量45kWh のバッテリーを搭載し、フル充電での航続は最大で330km(WLTPサイクル)に到達する。ID.3の最初の1台は、この島民が所有していた3代目『ゴルフ』の代わりになるという。
フォルクスワーゲン ID.3◆目標は島の自動車の数を約3分の1に減らすこと
フォルクスワーゲングループはID.4やID.3だけでなく、今後数年間に計画されているいくつかの新型車を、アスティパレア島に導入する。また、ポリスカーだけでなく、空港の車両、地元企業の商用車や救急車、自治体の車両も電動化する。フォルクスワーゲングループは、島全体に充電器を設置して、約230の充電ネットワークを構築していく。
今後5年間で、アスティパレア島はスマートで持続可能な島に変わるという。EVの充電には、風力と太陽光によって現地で発電されたグリーン電力を利用する。カーシェアリングやライドシェアリングなどの新しいモビリティサービスが、現在のバスによるサービスに取って代わる予定だ。全体的な目標は、島の自動車の数を約3分の1に減らすことという。
今夏には、フォルクスワーゲングループは島内の企業と協力して、EVによるモビリティサービスを開始する予定だ。このライドシェアリングとカーシェアリングが、島内の車両の台数を減らしながら、モビリティを向上させることにつながる、としている。
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