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Saturday, May 22, 2021

あれ、つま先しか届かない! 地下鉄の新型車両、その座席に異論 「立ち上がりやすさ」と「座りやすさ」の両立を - 神戸新聞

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 神戸市営地下鉄西神・山手線で導入が進む新型車両について、神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に今春、「座面が高くなって長く座っているのがつらい」という女性の声が寄せられた。だが、それを受けて市交通局に尋ねたところ、「座面の高さは従来車両と同じ」だという。変化の理由は何なのか。取材を進めると、誰もが利用しやすいユニバーサルデザインの課題が浮かび上がった。(金 慶順)

 投稿者は神戸市西区に住む40代の会社員女性。身長148センチと小柄で、膝に持病があるという。通勤で片道約15分、地下鉄に乗る。

 「新しい車両の座席に初めて座ったとき、床につま先しか届かなくて戸惑いました。以前はかかとも床に付いたので」

 足をぶらぶらさせた状態で座っているのがつらく、女性は立ったまま通勤するようになったという。

 2019年2月に運行が始まった新型車両6000形。市交通局地下鉄車両課の担当者に尋ねると、座面の高さは新型・従来とも445ミリとのことだった。その上で、「座り心地に違いがあるとすれば、シートの材質かもしれません」と教えてくれた。

 従来車両のシートはばねの上にフェルト生地を重ねており、座ると沈み込む分、実際より低く感じる可能性がある。一方、新型は、成形しやすく型崩れしにくいウレタン素材を導入。沈み込まないため、従来より高く感じる人がいるとみられる。

 担当者は「沈み込まないので、座った状態から立ち上がりやすい」とウレタンのメリットを説明する。また、乗客が詰めて座るよう誘導するくぼみを作るため、成形しやすいウレタンを採用したという。

 多くの人の「立ち上がりやすさ」が、一部の人に「座りづらさ」を強いる状態に。投稿者の女性は「地下鉄にはいろんな人が乗っています。車両内に2種類の座席を作ることはできないんでしょうか」と疑問を投げかける。

 担当者は「『硬くて座りにくい』などの意見もいただいている。乗り心地の良い車両に向けて、今後の研究材料にしたい」と話す。

 バリアフリーなどを研究する神戸学院大学総合リハビリテーション学部の糟谷佐紀教授は「公共空間では、ある人にとって使いやすいものがほかのある人にとっては使いにくい場合がある。それを対立と捉えるのではなく、高い座席と低い座席を備えるなどして『選べる』ようにすることもユニバーサルデザインの考え方の一つ」としている。

    ◆    ◆

 近年、鉄道各社車両のロングシートの座面は「脱・ばね式」が進み、ユニバーサルデザイン化も試みられている。

 JR西日本は発足当初、ばね式を使っていたが、2005年から神戸線などの普通電車として運行する321系でポリエステル素材に変更。リサイクルしやすく、火災が起きても有毒ガスが発生しにくいという。座面の高さは立ち上がりやすいよう約450ミリにした。

 阪神電鉄もばね式を使っていたが、座面に1人ずつのくぼみを設けるためウレタン素材を取り入れ、その後はポリエステル素材を採用する。15年から運行する5700系では、一般座席(高さ約430ミリ)より座面が30ミリ高く、前下がりに傾斜した「ちょい乗りシート」を導入。「立ち上がるのがつらい」というお年寄りらの声を受け、立ち座りをしやすいよう設計した。1編成の中に2種類の高さの座席を備えている。

 一方、阪急電鉄は、神戸などで運行する通勤電車のロングシートは今も全てばね式だ。「耐久性や長時間の座り心地を考慮している」という。

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