ダイムラートラックおよび傘下の三菱ふそうトラック・バスは、災害時の救援車両の提供や開発に力を入れている。
2011年の東日本大震災の際は、オフロードトラックのメルセデスベンツ・ゼトロスをはじめ、ウニモグ、Gクラス、それに三菱ふそうキャンターなど50台をいち早く日本財団に寄贈し、被災地の復興支援に寄与したことは、今も記憶に新しい。
その三菱ふそうが新たに開発したのが、災害救助支援車両「ATHENA」(アテナ)だ。同車は市販されている「キャンター」4輪駆動モデルをベースに被災地などで支援活動を行なうレスキュー車の装備を架装・搭載したもの。
日本各地で災害が激甚化するなか、トラックメーカーが考える「社会に貢献するトラック」をカタチにしたATHENAは興味深い存在だ。
『フルロード』編集部では同車に試乗する機会を得たので、商用車ジャーナリストの多賀まりお氏によるレポートをお届けする。
文/写真:多賀まりお
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■災害時、各地の被災地で活躍する「女神様」
ATHENA(アテナ)はオール・テレイン・ヘビー・エマージェンシー・ナビゲーション・アドバンテージの頭文字を取ったもの。
もちろん、ギリシャ神話の知恵や戦略を司る女神の名前を意識したネーミングだが、本来は車両単体ではなくトラックメーカーがトラックの社会貢献の可能性を考えるプロジェクトの総称という。
メーカー各社は大型車の加害性を抑制するべく、先進デバイスの開発・搭載に腐心しているが、アテナには災害支援車両のように(トラックで)社会の安全に寄与したいとの思いもある。
よって市販モデルで成立する車両であることが重要なポイントで、ショーカーではなく、実際に現場で人々の役に立つことがアテナの使命である。
企画がスタートした背景には開発担当者が東日本大震災直後の被災地に支援物資を運んだ際の体験があるという。
車両の仕様を検討する過程で、国士舘大学の防災・救急救助総合研究所の協力を得た。緊急災害支援チームや学生ボランティアを被災地に派遣する活動を行なっている同研究所から提供された現場のニーズやアイデアよって、アテナは救助車両としての実用性と機能を高めることになった。
同研究所とは連携協定も締結され、同車両は防災ボランティア活動をはじめ、さまざまな被災地支援に活用される予定だ。そうした過程で磨かれた使い勝手やノウハウが共有蓄積され、次の車両を製作する際に活かされる。
すでに被災状況を早期に把握するニーズからドローンベース(基地)と通信機能を備えた偵察用車両として発展させる案なども出ており、継続的な取り組みが実現すれば面白いと思う。
■カミオンレース風シルエットのベースは市販のキャンター高床4WD
アテナのベースは小型トラック「キャンター」のワイドキャブ高床パートタイム4WDモデル。ホイールベース3415mm(E尺)の2t積み車型である。
キャンターは標準幅キャブ車には通常の2WD車と(ほとんど)同じ車体寸法の低床フルタイム4WDをラインナップするいっぽう、ワイドキャブ車型は専らオフロードでの使用を想定したヘビーデューティな仕様を設定している。
フロントサスペンションは低床系がダブルウィッシュボーン式独立懸架にドライブシャフトを組み合わせるのに対し、高床系はディファレンシャルギアと一体のアクスルハウジング(いわゆるホーシング)をオーバースラングのリーフスプリングで吊るリーフリジッド式。
舵角とバウンドストロークを確保するため、フレームはフロント部分をキックアップさせており、後軸側も合わせてフレームハイトを上げた結果、標準平ボディの床面地上高は1135mmと、標準状態でも相応に高い。適度にリフトアップされた4WDらしい(?)プロポーションとなっている。
エンジンはキャンターに積まれる4P10型(2998cc)の中でも最も標準的なT4タイプ。150PS/2440rpmの最高出力と43.8kgm/1600〜2440rpmの最大トルクを発揮する。
同機は平成28年排出ガス規制対応を機に出力特性を見直し、各馬力仕様とも最大トルク値を175PSのT6タイプと同じ43.8kgmにアップ。同時に最高出力の発生回転数を下げることで、より低中回転数域で走りやすい味付けとした。
組み合わせるギアボックスは6段デュアルクラッチ式AMT「DUONIC 2.0」もしくはOD5段マニュアルで、前後輪に駆動力を伝達するトランスファに副変速機は備わらないが、5.285と大きな最終減速比で高い駆動力を確保。
パートタイム式のためセンターデフはなく、2WD走行時のフリクションロス低減用にマニュアル式フリーハブが付く。
■コンパクトな車体にアイデアを満載
標準の225/80R17.5に対し37X12.50R17.5という、トヨタ・メガクルーザーと同サイズの大径タイヤを履くアテナは、デパーチャアングル確保のためにリアオーバーハングのフレームを約325mmカットしてある。
コンパクトな箱型リアボディを架装した姿は安定感とともにダカールの競技トラックのような迫力を感じさせる。
タイヤ外径が約130mm大きい分車高は上がっているが、サスペンションはノーマル(後輪はホイール取り付け面に片側66mmのスペーサーを装着してトレッドを拡幅している)。
キャブ前面にはフロントウインドウを障害物から守るブッシュガードとLEDの補助灯を装着し、ガードとの干渉を避けるためにバックミラーは海外の左側通行仕様に変更。バンパー部には電動ウインチが収まりアンダーガードも備わる。
パブコ製のリアボディは内部が前後3室に分けられ、前方の2室は側面の跳ね上げ式扉を開けてアプローチする引き出し式の収納、最後部はオフロードバイクも格納できるカーゴスペースで、同じく跳ね上げ式のテールゲートが付く。
キャブとリアボディ前部のルーフ上にはキャブ天井部の開閉式ハッチを使って室内から直接出入りできる作業用スペースを用意。作業時はホイールベース間4箇所の手動式アウトリガで車体の安定を図るなど使い勝手を高めるアイデアが随所に盛り込まれている。
高くなったキャブフロアのため乗り降りは容易とはいえず、標準装備のステップの下に足掛けがもう一段欲しい。大型車のように乗降時につかまる手すりがドア開口部内にあっても良いかもしれない。
室内は2人乗車仕様で、中央にルーフハッチ使用時のステップを配置。レカロ製のシート(シートサスペンションは備わらない)は座面部のサイドサポート高が低いタイプとして乗降性に配慮している。ヘルメットを被った場合への配慮なのか、座面の高さは標準のシートよりも低く感じられた。
DINスペースに拡声器のアンプが付くほかはインパネは変更なし。ギアボックスは5段マニュアル仕様だった。2WD/4WDの切り替えは(インパネ上の)スイッチで行なう。
■被災地の守護神アテナに試乗! 悪路走破性を重視したセッティングに納得
試乗時は空荷だったが、車両重量は約3.9tとのこと。架装重量が1t近い計算だが、特種車では珍しいことではない。
インパネ部に配置されたシフトレバーはワイヤーの配索が良いのか節度感が明確で、とりわけセレクト方向は小さいストロークで操作できる。4t程度の車重では2速発進は楽々。
DUONICの6段とほぼ同等のギアレンジを5段でカバーするため、各段のギア比は比較的離れているが、フィアット・パワートレーン社製F1C型をベースとする4P10型は日本の小型トラック用エンジンとしては例外的に高回転までストレスなく回る。
4000rpm近くまでトルクが落ちないので、少々引っ張り目で変速すれば、ギアの繋がりも良好だ。
排気ブレーキの効きが穏やかなのは小排気量エンジン共通の悩みだが、高い回転数域では相応の存在感が見られる。
今回は三菱ふそう・喜連川研究所内のオフロードコースで乗せてもらったが、ワダチ掘れやギャップの目立つグラベル路でも空気量の多いタイヤにより乗り心地は良好。
速度を上げるとロールがやや大きい印象もある。ただ、基本的にはロール剛性よりも低速での悪路走破性を重視する車両だと思う。
4WDへの切り替えはスイッチ操作一つ。ハブがフリー状態の場合はトラックを降りて手動でロックする必要がある。
パートタイム4WDとマニュアルフリーハブの組み合わせは今となっては珍しい存在だが、プリミティブで壊れるところの少ないシステムが、道具としての自動車には合っているように思う。
* * *
アテナは、昨秋の「東京モーターショー」にも出展されたが、屋外会場だったので見逃した人も多いはず。そのアテナは小改良を施し、7月30日にメディア向けに開催される三菱ふそう「Fuso Future Solutions Lab」に登場する予定。日本の災害救助支援に頼もしい味方がスタンバっているのだ!
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July 28, 2020 at 03:00PM
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