東海道新幹線に7月1日、新型車両「N700S」がデビューする。13年ぶりのフルモデルチェンジで、座席のリクライニングや揺れ軽減装置の改良で「ワンランク上の乗り心地」を実現。客室の防犯カメラ増設や停電でも自力走行できるリチウムイオン電池のバッテリー搭載で、安全対策も強化した。

本年度中に12編成、2022年度末までに計40編成となる見込み。山陽新幹線への乗り入れも想定され、列島の大動脈輸送を担う次世代のエースになりそうだ。

JR東海は13日、実際の営業運転で使う「N700S量産車」を東京-新大阪間で走行させ、内部を報道関係者に公開した。東京駅19番線では、入ってきた真新しい車両を親子連れらが撮影。午前10時すぎ、新大阪に向けて出発した。

新幹線車両の象徴となる先頭形状は5万種類超のシミュレーションを経て、トンネル進入時の空気抵抗を低減した。

従来の東海道新幹線車両を踏襲し、1編成は16両で、普通席1123、グリーン席200の計1323席。全席にコンセントが配備され、無料Wi-Fiが利用可能だ。シートの素材は、飲み物などでぬれるとすぐに気付けるよう、柄が変化する素材が使われている。

客室では発光ダイオード(LED)による間接照明を採用。荷物棚は忘れ物を防ぐため、停車前に明るくなる。停車駅などの情報を表示する液晶ディスプレーは面積を既存車両より50%拡大した。

車いす専用スペースは2台分。客室の天井にもカメラを設置し、1編成では計165台となる。5月から始まった特大荷物置き場や、従来通り喫煙スペースもある。

客室と台車の間にある油圧式の「フルアクティブ制振制御装置」はグリーン車と一部普通車に入り、揺れを抑える。冬場の大雪に備え、台車に融雪ヒーターも設置した。

東海道新幹線では1999年デビューの700系が今年3月に引退。全ての車両を「N700Aタイプ」に一本化し、最高時速は285キロに統一された。N700Sは360キロを出す性能があるが285キロで運転。当初は今夏開催予定だった東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを前に、7月1日から5編成が入る計画だったが、新型コロナウイルスの影響でまずは4編成が登場する。(共同)