日本が世界に誇る高速鉄道・新幹線は、乗り心地の良さも世界トップクラス。日本が得意とするこまやかな「おもてなし精神」が随所に詰まっている。本日は、そんな新幹線のこだわりや話題を一挙紹介。今年は行楽を諦めた…という人も旅気分を味わって―。
真新しい真っ白な車体が東京駅に滑り込んできた。昨年七月、十三年ぶりにフルモデルチェンジした東海道新幹線の新型車両「N700S」。開発に携わったJR東海の福島隆文車両課長(48)は「現時点で最高の車両です」と胸を張る。
先代のN700Aとの一番の違いは乗り心地だとか。グリーン車のシートは、背もたれを倒すと座面が沈み、さらにシート全体がわずかに後ろへずれる。腰と太ももの負担を軽減し、疲れにくい姿勢を維持できるよう、人間工学に基づいて設計された。普通車のシートも背もたれと座面が連動する。
グリーン車と普通車の一部に導入された最新の制振システムは横揺れを大幅に抑制。トンネルで新幹線とすれ違っても揺れはほとんど感じないという。丸みを帯びた先頭形状も走行中の空気の乱れを抑え、揺れを防ぐ。
毎日のように出る多数の忘れ物を防ぐ仕掛けも。駅に着く直前、荷物棚のLED照明が点灯し、乗客の視線を自然に棚へと誘導する。
ここから先はさらに細かい。シート表面は、濡れるとうっすらとしま模様が浮かび上がる。飲み物がこぼれて濡れたシートに座ってしまい、服が汚れた−。そんなトラブルを回避するのが狙いだ。座席下の六本の溝は、こぼれた飲み物が床を伝って前後の乗客の足元に流れ出るのを防いでくれる。
ほかにも窓際のテーブルの大きさと形状を工夫して、カーテンを閉めてもペットボトルを置けるようにしたり、全席にモバイル用コンセントを搭載したりと、かゆいところに手が届く改善が施された。
JR東海の最高の技術とアイデアが詰まったN700Sの姿に、福島さんは目を細めながらも、頭の中は次の“新型”に向かっている。「完成=スタート。改善点探しは始まっています」
◆見る 飲む 知る
新幹線ヒーロー「シンカリオン」も今春、進化を遂げた。4月から放送が始まったアニメ第2期「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」=写真<1>、(C)プロジェクト シンカリオン・JR−HECWK/超進化研究所Z・TX=では、在来線が変形した武装強化車両とシンカリオンが合体するなどパワーアップ。
さいたま市大宮区の鉄道博物館では「シンカリオン展」が開催中。約2メートルの立像やキャラの原画などシンカリオンの世界が楽しめる。
わずか300円で新幹線に乗れる路線がある。福岡市博多区の博多駅と福岡県春日市の博多南駅を結ぶ博多南線だ=写真<2>、JR西日本提供。運賃200円、特急料金100円。
JR西日本によると、もともとは博多駅から新幹線の車両基地までの回送線で、無人の新幹線が走っていた。1990年、公共交通機関が乏しかった地元の要望で開業。1日1万6000人超が利用し、周辺の街の人口増加に寄与している。
乗車時間そのものが上質な旅の一部になるJR東日本の最上級シート「グランクラス」。飲み物を提供する際に使用するグラスを車内限定で販売している=写真<3>、JR東日本提供。
オスログラスとミニピルスナーの2種類。1825年創業のイタリアの老舗メーカー製で、グランクラスのオリジナルロゴマークが入っている。2個セットで3000円。自宅でも旅の思い出に浸ってみては?
車内販売のコーヒーにもこだわりが詰まっている。
東海道新幹線のコーヒー=写真<4>、JR東海提供=は、コクと甘みが特徴のブラジル産豆、華やかな香りが楽しめるニカラグア産豆を、それぞれ焙煎(ばいせん)した後にブレンドしている。山陽新幹線のコーヒーもブラジル産のアラビカ種豆を使用し、ミルクチョコレートのような甘みと程よい苦味が特徴だ。
文・西川正志/写真・隈崎稔樹、戸田泰雅
※緊急事態宣言を受け、29日から当面の間、JR東はグランクラスの営業を、JR西はコーヒーの車内販売を中止する。
◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。
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