パナソニックのフルサイズミラーレスカメラSシリーズ用のLマウント中望遠単焦点レンズ「LUMIX S 85mm F1.8」が11月26日に発売された。同シリーズの単焦点レンズは、LUMIX S1および同S1Rの登場と同時に発売された「LUMIX S PRO 50mm F1.4」に次いで2本目となる。発売に先立ち本製品を試用する機会を得た。さっそく使い勝手や描写について、LUMIX S5との組み合わせで確認していった。
実際以上に軽く感じるグッドバランス
LUMIX S 85mm F1.8の重量は約355g(フード含まず)だ。今回組み合わせたLUMIX S5(約714g:バッテリー・メモリーカード込み)との組み合わせだと、その重量は約1,069gの計算になる。
総重量は約1kgとなるわけだが、LUMIX S5の凝縮感のあるボディサイズと適度な深さ・厚みを有するグリップの賜物だろう、バランスは非常に良好で、数値の印象よりも軽く感じられた。
85mm F1.8自体は、かねてよりレンズロードマップ上で開発が報じられていたもので、ようやくパナソニック純正のフルサイズ用単焦点にリーズナブルな選択肢が加わったことになる。LUMIX S PRO 50mm F1.4自体は素晴らしい描写なのだが、それでも50mmレンズの中では屈指の価格であり、手軽にチョイスできる製品とは言いづらい面があっただけに、余計に本レンズの魅力が際立っているとも言えるだろう。
本製品は、LUMIX S5の発表とあわせて発売時期の正式なアナウンスが出されたわけだが、同時にF1.8単焦点レンズの開発も報じられたこともまた、記憶に新しい。
新たに開発が報じられた単焦点レンズの焦点距離は24mm、35mm、50mm。いずれも開放F値をF1.8とするレンズで、開発コンセプトを「優れた描写性能と高い機動力を両立する」ことに据えて、本製品と同じサイズでの仕上げで訴求していく考えだ。
今回は、休日を利用して1日を通して手持ちで街中を撮り歩くスナップスタイルで試用していった。機材は基本的に手持ち。ストラップで吊り下げることなく片手で持ち歩くことで重量感の変化や疲労感についても確認していった。以下、実際に撮影したカットを交えつつ、描写とハンドリングに関する感想をお伝えしていきたい。特に注記のない限り、フォトスタイルは「スタンダード」に設定。JPEG記録した画像を無加工で掲出している。
実写と感想
LUMIX S5には動物AFが搭載されている。被写体との距離が2m程度であれば、しっかりと対象を認識してくれる印象だった。さらに85mmの距離感だとしっかり警戒心もある地域猫であっても、怯えさせることなく撮影できた。意図して前ボケを大きくつくって猫に視線がいくように調整してみたが、ボケ方も急峻ではないため、自然な立体感が得られた。
LUMIX SシリーズのAFはコントラスト式だ。昨今のミラーレスカメラでは、そのほとんどが位相差方式とコントラスト方式のハイブリッドとなっているが、だからといって、LUMIX DFDテクノロジー(空間認識技術)は、スピード面で劣るということはない。コントラストAFならではの迷いが全くないかというと、もちろんそんなことはないのだけれども、とはいえハイブリッド式でも迷いやすい、こうした窓のリフレクションを利用した撮影でもしっかりと意図に応えてくれる。
窓枠の部分が前ボケとなっているが、この枠部分はガラス面からわずか数ミリ程度の段差でしかない。それでもこれだけ奥行き感のあるカットにしあげることができたのは、F1.8の被写界深度の浅さゆえだろう。撮影距離は、ほぼ最短(最短撮影距離は0.8m)。まさにフルサイズで明るいレンズを用いる醍醐味だろう。
85mmといえば、ポートレート用のレンズという見方が一般的だ。が、人物撮影をしないからという理由で85mmを避けてしまうのはもったいないと思う。筆者は85mmという焦点距離をスナップでも一歩踏み込んだ撮影ができるレンジが得られるものだと考えている。視覚に飛び込んできた対象を、「あなたが見ているのは、こういう景色ですよね」とレンズが再確認を促してくる感覚といえば良いだろうか。
風雨にさらされ、一部が剥がれ落ちたステッカーとそれを引き立てる窓の質感が目に留まった。ピント位置はスプライトの瓶のあたり。ガラス面の風合いも寂び感をひきたててくれている。
ピント面前後のボケの出方をみた。不動明王のステッカー上端のめくれあがっている部分にフォーカスポイントを置いている。絞りは開放のF1.8。アウトフォーカスからシャドウ部にかけてのボケ感と階調描写も滑らかだ。シャドウも潰れることなくディティールを描き出しており、センサーとのマッチングの良さも魅力だと感じる。
滑らかな前ボケをいかして、多重露出のような演出をしてみた。フォーカスポイントは消失点に配置しているが、これは画面の7割を前ボケで構成するため。一工夫した撮影が可能であることは、表現の幅を広げてくれる。
後ボケの描写も滑らかだ。頭ひとつ分大きい植物をシンメトリックな位置関係になるように構図を整えて、影のように構成。さらに後方により濃度の濃いほんとうの影をもってくることで、カタチの面白さを狙ってみた。背景のクリーム色の壁やグリーンの発色もとても自然だ。
二輪車のスクリーン。さすがにF8まで絞り込むと細かいスリ傷の1点1点まで見てとることができるまで解像する。撮影時の状況は太陽が頂点近くにある時間帯で、目を開けていられないほどの逆光だった。フリンジや色収差の発生も見られず、説明しなければド逆光とは思えないカットになっていると思う。スクリーンに刻まれた細かな傷に光が乱反射しているが、破綻していないため、素材感を引き立てることにつながっていると感じる。
輝度差のきわめて大きなシーン。足早に歩いてゆく人物にフォーカスを合わせているが、AF速度も速く、決め打ちで写し止めることができた。取り回しのしやすいボディとあいまって、こうした瞬間をつかむ強さも魅力だ。
正午近くの強烈な太陽光が石畳に反射する。パナソニックのカメラはフルサイズのSシリーズはもちろん、マイクロフォーサーズ機のLUMIX G9 PROにも豊富なモノクロームモードが搭載されている。ここでは「L.モノクローム」を使用。シルエットにした人々の姿とその影、また石畳の階調を美しく描き分けてくれている。太陽の位置はほぼ頂点。さすがに強烈な光があたっている画面中央部には白トビが発生しているが、絶妙な人物の黒と、背景の黒の濃淡が立体感を生み出していると感じる。
輝度差がさらに強いシーン。暗部のディティール描写にみられる粘り強さはセンサー性能にも依るところは大きいのは確かだけれども、そのセンサーを追い込んで使っていけるレンズであることは、やはり大きな魅力。総じて光の受け止め方が巧みなレンズだと思う。
薄闇に浮かぶ和風の電灯。前記してきているとおり、ボケの描写だけでなくハイライトやシャドーのグラデーションが滑らかであることもあり、自然に主点としている被写体が際立ってくる。そうした中で、ごく自然な描写として受けとめることができる、というのは実はとても非凡なことなのではないだろうか。
F1.8と比較的大口径な明るさながら、本レンズはひじょうにコンパクトに仕上げられている。自然と口径食への心配が頭をよぎるけれども、どうだろうか。中央部から周辺部にいたる部分をいちどに確認できるように画面を構成してみた。
形状としてはレモン型。中央部ではほぼ円形を維持している。どの距離でも形状が一定しているため、クセのないボケ描写が得られるだろうと想像できる結果となった。これがスムースな前後ボケを支えているのだと思う。
マニュアルフォーカスで、画面全体をアウトフォーカスにして玉ボケの海をつくりだした。LEDの普及で電球色のほか、白や青などさまざまな色の光がよく見られるようになった。カラーながらもモノトーンな玉ボケの世界をつくるのも楽しそうだ。
夜の路地裏から。床面に反射する電灯の光と色が印象的だった。と、そこに足早に通り過ぎゆく人の姿が。ローライトな条件ながら、この程度ではテストにならないくらいにフォーカスは速い。
光をうまくすくいとってくれるレンズだと思う。四隅の均質性も当然のように高く、壁面の直線や、画面下に配した斜線が気持ちよく伸びる。F1.8からじゅうぶんに解像してくれることもあり、絞る必要が感じられず、そのことでISO感度も大きく上がらない利点もある。あとは被写体との距離のとり方しだいで、夜景撮影の自由度は格段にあがるに違いない。楽しみ方の次のステップを提示してくているかのようだ。
動画ユースを見込んでいるカメラということもあり、画づくりを担うフォトスタイルにはシネマ系も豊富に取り揃えられている。ここでは「709ライク」を使用。「高輝度部分を圧縮し、白飛びを抑えて撮影できる」(製品紹介Webページ)という説明のとおり、ハイライト側のトーンがトビきるギリギリのところまで粘っている。それでいて彩度が抑えられているため、現代レンズの均質性をいかしながら、オールドレンズライクな風合いの表現もできる。晩秋の少し冷えてきた空気感を伝えてくれるカットに仕上がったと思う。
総評
冒頭でも簡単に触れたとおり、休日はほぼLUMIX S5とのセットで朝から夜まで手持ちで撮り歩いて試用していった。同社フルサイズ機との比較で言うと、体感的に3〜4時間で腕にじわりとした疲労感が伝わってくるLUMIX S1/S1Rに比べて、本セットの軽さが、まず際立って感じられた。もちろん、Sシリーズ用のレンズに小型軽量で、かつ明るいレンズの選択肢がこれまでなかったということも大きいのは事実ではあるものの、これだけの画質と小型軽量性が両立しているところは、大きな魅力だ。まだまだパナソニック純正としてのレンズラインアップは寂しさがあるものの、今後F1.8シリーズとして24mm、35mm、50mmの展開もアナウンスされていることをふまえると、楽しみが増えるというもの。SIGMA fpユーザーはもちろん、今後Lマウントで登場するであろうフルサイズFoveonを楽しみにしている向きにとっても、本レンズを含めたF1.8シリーズの展開からは目が離せないだろうと思う。
これだけの感想がでてくるほど、本レンズを用いてのスナップは楽しかった。基本的に「写真を撮っていれば楽しいだろう」、という見方はさておくとして、いまフルサイズ機の小型軽量化は大きなトレンドとなっている。しかしながら、描写性能を優先したり明るさを優先したりといった、「何をとるか」という開発コンセプトの面から、大きく重たいレンズが各社から多く発売されていることも事実。反面で、多くのユーザーがミラーレスカメラに対して期待している小型軽量性と描写品質という面では、バランスが整っていないケースが多くみられていた。
そうした状況に対して一石を投じた一例として、例えばタムロンのソニーEマウント用高倍率ズームレンズであったり、小型軽量性を最大のポイントに据えた単焦点F2.8のレンズシリーズが挙げられるが、この点については、多くの方に同意いただけるものと思う。事実として、やはり軽さとハンドリング性能の高さは、やはり正義であることは確かなことなのだから。
本製品に話を戻すと、LUMIX S5のサイズとの相性は極めて高く、軽快に撮り歩くことができた。腕への負担が少ない分、一工夫を加えた撮影に踏み込んでいけるということは、ここまで書き綴ってきた中で少なからずお伝えできているものと思う。
レンズ自体はハンドリングが良く取り回しがしやすかったのだが、LUMIX S5自体は小型化によるものか、少しだけボタン配置が窮屈になっていたように感じた。既に新製品レビュー(新製品レビュー:Panasonic LUMIX S5)で豊田さんも話題にとりあげたように、ジョイスティックの押し込み量の浅さは、フォーカスポイントの選択で押し込みすぎてフォーカスポイントが中央に戻ってしまうといった場面が少なからずあった。
また、ジョイスティックの近傍にAF ONボタンが配置されているが、筆者の場合、このAF ONボタンの枠がジョイスティック操作時に干渉してしまい、少々気になった。
親指AFを多用するユーザーであれば、この配置はおそらく使い勝手の良さをもたらしてくれると推察するが、筆者はこの操作系の必要性は感じていない。何とか活用の方法はないものかと一考した案があるので、以下に一例として紹介しておきたい。
まず、ジョイスティック操作の改善を企図して背面モニターを利用したフォーカスポイント操作(タッチパッドAF)を試用してみた。結果としては、ファインダーを覗いて撮影する場合に限られるものの、操作が格段にしやすくなった。
タッチ操作が可能な範囲は、右手親指で触れる範囲だけあれば十分なので、「相対位置2」か「相対位置3」を選択。操作有効範囲が狭くなるという心配もあるだろうけれども、「相対位置3」でもじゅうぶんな効果が得られた。
次にAF ONボタンの処遇だ。ここには、「SCP AFポイントスコープ」を割り当てた(設定は、Fnボタン設定→撮影時設定、からおこなえる)。これはフォーカスポイントを拡大表示してくれる機能。コントラストAFならではの挙動であったり、被写界深度の浅さをいかして厳密にピント面を追い込みたい時の操作性が向上する。MF操作時には自動でこの拡大表示機能が動作するけれども、AF時でも指の位置を動かさずにピント位置を追い込んでいけるので、筆者と同じくAF ONボタンを使用しない人は一度試してみてほしい。
ボディに関する感想を交えたものとなったが、本レンズのハンドリングのしやすさは、強調してもしすぎることがないものだと感じた。レンズが軽いだけでも、こんなにいろいろなことを試すようになるのかと、数日間の撮影を振り返っている。価格自体も税込で8万1,400円と、フルサイズ向けの最新レンズとしてはバリュープライスであることも大きな魅力。Lマウント機ユーザーはもとより、フルサイズのLUMIXシリーズを検討していた人にとって、大きな追い風となる製品となりそうだ。
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November 30, 2020 at 04:00AM
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