Pages

Monday, March 14, 2022

東北走った旧国鉄車両「キハ40」、播磨で予想以上の人気に…「まだ20年は使えます」 - 読売新聞オンライン

lohduri.blogspot.com

 北条鉄道(本社・兵庫県加西市)がJR東日本から購入して今月から本格運行するキハ40形ディーゼル車が話題を呼んでいる。改修費の一部を賄う寄付を全国から募ったクラウドファンディングでは目標の300万円を初日に達成、約1300万円を集めて人気を示した。旧国鉄時代に製造された中古車両がなぜ注目を集めているのだろうか。(高田寛)

 北条鉄道にやって来た車両は、主に青森・秋田両県を結ぶ五能線で昨年3月まで使用。1979年の製造から40年以上、地球82周に相当する約330万キロを走り、平成世代の現役車両の約2倍の車齢を重ねている。

 それでも「良い買い物でした。まだ20年は使えます」と藤井秀明常務は相好を崩す。実は、ローカル線向けのディーゼル車の<中古車市場>は「出物がない」状態が続いており、掘り出し物なのだという。

 赤字経営で数億円かかる新車の導入は難しく、全国の鉄道会社で廃車予定車を探した。四国や北海道、静岡県などに足を運んだがなかなかタイミングや条件が合わず、やっと見つけたのが東北のキハ40。車体は頑丈で、JRで強力で燃費が良いエンジンに交換済み。雪国仕様の台車は特急並みの乗り心地。多額の費用が必要な定期検査までの期限が残っていることや、JRに現役車両があり、今後の部品確保や修繕がしやすいことも決め手になった。

 単線で上下どちらか1本の列車しか行き来できなかった北条鉄道が、途中の法華口駅に行き違い設備を新設したのは2020年8月。通勤・通学時間帯の増発で利便性を高め、貸し切りやイベント列車も運行可能にして増収につなげる狙いだ。キハ40導入は本来、稼働が増えて検査や故障時に不足する車両を補う目的だった。

 JR西日本エリアではありふれた現役車両だが、注目度は同社の予想以上だった。お披露目のイベント運行は定員150人に約9倍の応募があり、有料の記念撮影会も盛況。沿線の家族連れらが試運転の見学に駅に駆けつけ、住民同士で「キハよんまるが来た」と言葉を交わす。クリアファイルやキーホルダーなどキハ40をあしらったグッズは売り切れが相次いだ。

 急速に数を減らす国鉄車両への郷愁に加え、五能線の白色に青帯の塗装のまま車内に東北の路線図や広告も残し、「東北の列車が播磨の田園風景の中を走る」と興味をかき立てる狙いも当たった。

 新型コロナウイルス禍で利用が落ち込み、北条鉄道の20年度決算は2300万円の赤字。キハ40乗車をコースに組み込む旅行会社のツアーやファン向けイベントと、月30万円を見込む関連商品売り上げの「キハ効果」で稼ぎ頭にしたいと期待をかける。

 岡山県の水島臨海鉄道、千葉県のいすみ鉄道、小湊鉄道などの私鉄も、国鉄時代の車両を活用して観光客や鉄道ファンを呼び込む取り組みに力を注ぐ。元いすみ鉄道社長で、現在は新潟県のえちごトキめき鉄道で旧国鉄の急行形電車を走らせ成功している鳥塚亮社長は「国鉄車両の『全国区の人気』を生かし、来訪者が求めていることを考えた演出で、ローカル鉄道自体を観光資源にする取り組みが必要。大阪のような大マーケットに近い北条鉄道なら、100人に1人の心に刺さるような商品や企画でも大きなボリュームとなって成立する」と話す。

 一方で、加西市議会では既存車より約8トン重いキハ40の線路への負荷や、「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンが集まるトラブルに対する不安も指摘された。1991年に滋賀県で起きた信楽高原鉄道事故はイベント優先で安全を軽視したことが要因となった。北条鉄道は線路や設備の点検を徹底し、事故防止に取り組む構えだ。

 JR線で乗るのとは違った雰囲気が味わえるキハ40で、沿線の旧海軍 鶉野うずらの 飛行場跡などの戦争遺跡や法華寺、県立フラワーセンターを訪ねてみてはいかがだろうか。

  ◆北条鉄道= 北条町(加西市)―粟生(小野市)間13.6キロを結び、八つの駅がある。2020年度の乗客数は約27万8000人。播州鉄道が1915年(大正4年)に開通させ、播丹鉄道を経て戦時中の43年に国有化。国鉄赤字ローカル線廃止で85年、北条線から自治体出資の第3セクター鉄道になった。

  ◆キハ40形= 国鉄時代の1970~80年代に392両が製造され、北海道から九州まで各地の幹線やローカル線で活躍した。鋼製で全長約21メートル、重さ約38トン。前後に運転席があって1両で走れるため、乗客が少ない線区のワンマン運転に重宝された。車内には向かい合わせの座席と、窓を背にする座席がある。JR西以外では老朽化で廃車が進み、一部はミャンマーに譲渡されている。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 東北走った旧国鉄車両「キハ40」、播磨で予想以上の人気に…「まだ20年は使えます」 - 読売新聞オンライン )
https://ift.tt/DdyEtvZ

No comments:

Post a Comment