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Tuesday, February 22, 2022

試験終了後の転用も考慮? 水素ハイブリッド電車「HYBARI」を詳しく見る - 鉄道コム

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「HYBARI」の要、燃料電池ユニット

実は燃料電池車両は、海外ではドイツを走る「Coradia iLint」として既に実用化され、旅客営業列車として運用されています。国内でも、先の「NEトレイン」のほか、鉄道総合技術研究所の試験車両による実車試験が進められてきました。

ドイツを走る「Coradia iLint」(画像:アルストム)
ドイツを走る「Coradia iLint」(画像:アルストム)

これに対する今回のFV-E991系は、狭軌線用かつ営業列車としても運用可能な仕様としては世界初ということ。なにやら限定的な「世界初」ではありますが、先行する標準軌線用車両や、室内空間も自由に使える試験用車両と比較し、車体幅が小さい狭軌線用車両では、機器配置スペースが限られます。ドイツの「Coradia iLint」では、水素関連機器は全て屋根上の搭載だといいますが、FV-E991系は、水素タンクを屋根上、燃料電池システム箱は床下に設置。これらの配置に苦慮したのだといいます。

また、海外の車両では、燃料充填圧力は35MPaだということ。こちらのFV-E991系では、海外の倍となる70MPaでの充填が可能となっています。

この70MPaという充填圧力は、トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」と同じ数値。そう、FV-E991系では、トヨタ自動車の協力を得て、「MIRAI」のシステムを使用しているのです。

トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」(2代目コンセプトモデル)
トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」(2代目コンセプトモデル)

水素タンクを含む水素貯蔵ユニットは、FV-E990形の屋根上に搭載。水素タンクは5本を1ユニットとし、これを計4ユニット設置しています。水素タンクの周辺温度が異常に上昇した場合には、自動的に水素を大気に放出して拡散させる仕組みも備えています。

床下には、燃料電池装置を設置。車体幅全体にまたがるサイズの燃料電池装置箱を2箱搭載しています。燃料電池による発電中には、この装置の下から水蒸気が発生します。また、この燃料電池装置の横には、タンクから燃料電池へ水素を供給したり、またタンクへ水素を充填するための床下配管ユニットも装備しています。

FV-E990形床下の燃料電池装置
FV-E990形床下の燃料電池装置
作動中の燃料電池。水蒸気が発生しています
作動中の燃料電池。水蒸気が発生しています

VVVFインバータを含む電力変換装置や、走行用の主回路用蓄電池(バッテリー)は、FV-E991形に設置。バッテリーは、燃料電池とともに走行用機器へ電力を供給するためのもの。燃料電池とバッテリー双方の電力を組み合わせることから、FV-E991系は「水素『ハイブリッド』電車」と呼ばれています。

燃料の供給は、移動式ステーションによる方式と、車両基地内に設置する充填方式の2つの方式で実施。前者は扇町駅で、後者は鎌倉車両センター中原支所や鶴見線営業所での試験が予定されています。また、充填方式によって燃料充填量が異なるため、航続距離も変化。70MPa充填となる前者では約140キロ、35MPa充填となる後者では約70キロとなります。現時点では従来型気動車に及びませんが、航続距離が約30キロだという蓄電池車両よりは長距離の走行が可能です。

ところで、FV-E991形の屋根上には、パンタグラフ台が設置されています。EV-E301系のように、パンタグラフを用いて充電する試験を実施するための装備なのかと思いきや、FV-E991系ではこのような試験は実施しないとのこと。JR東日本の担当者によると、将来の転用を考慮した設備だということです。

FV-E991形屋根上のパンタグラフ台
FV-E991形屋根上のパンタグラフ台

FV-E991系の先代ともいえる試験車両「NEトレイン」は、当初はハイブリッド式気動車の試験車両、キヤE991形として誕生。その後、燃料電池車両の試験車両であるクモヤE995形、続いて蓄電池車両の試験車両であるクモヤE995形「スマート電池くん」として、2回の大きな改造を受けました。

試験車両「NEトレイン」
試験車両「NEトレイン」

このFV-E991系も、燃料電池車両としての試験が終了した後、「NEトレイン」のように他用途の試験車両へと転用する可能性があります。そのため、具体的な用途は決定していないようですが、さまざまな試験に対応できるよう、使用する必要のない現時点から、パンタグラフの設置に対応した設計としたということです。

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