ウクライナのキエフに侵攻したロシア軍はウクライナ北部と国境を接するベラルーシから進軍したとみられる。日本経済新聞が衛星写真を分析したところ、ベラルーシのウクライナ国境近くの川に人工の浮橋を造り、24日の侵攻開始直後に地上部隊の軍用車両を大量に投入していたことが分かった。
プリピャチ川(地図①)
ウクライナ国境から約6キロメートルのところにあるベラルーシのプリピャチ川に浮橋がかかっていることを日経新聞が入手した衛星写真で確認した。撮影されたのは現地時間の24日午前8時ごろ。ロシアのプーチン大統領が軍事作戦を始めると発表した直後にあたる。浮橋を南に渡った川の南側には多数の車両が写っている。
雲がかかっていても地表の情報を取得できる米衛星運用会社カペラスペースの合成開口レーダー(SAR)衛星の写真を使った。日経新聞がスペースシフト(東京・千代田)と共同でデータ解析人工知能(AI)と同社の衛星写真専門家による目視分類で画像データを解析。浮橋がある川の周辺に約400両の車両があることが分かった。
浮橋の近くにある車両は、形などから浮橋を架ける際に使う軍用車とみられる。架橋車は約20両で、全長10メートル程度の大型車両も約80両確認できた。浮橋を使うことでベラルーシ側から川を渡ってウクライナに重装備の車両や兵士を送ることができる。
浮橋の付近にはチェルノブイリ原子力発電所があり、ロシア軍は侵攻後に同発電所を制圧した。さらに南に向かうと首都キエフがあり、一部はキエフに向かった可能性がある。
24日は現地が悪天候のため光学衛星での撮影が難しかった。同日に同じプリピャチ川周辺を写した欧州宇宙機関(ESA)の光学衛星の写真では、雲のようなものが上空全体にたちこめ、画像はほぼ真っ白で、地表の様子が確認できない。
(写真下部のボタンで操作)
浮橋は15日ごろに出現が確認されていた。米衛星運用会社のプラネット・ラブズの画像を15日と14日で比べると、14日には何もなかったが、15日には橋が架けられていた。ロシア軍はベラルーシで合同軍事演習をしていた。
ベラルーシのウクライナ国境の地点を2月25日に撮影した衛星写真を見てみる。ロシア軍がウクライナへ追加投入する戦力をベラルーシ南部の国境近くで準備している様子が確認された。攻撃ヘリや大規模な地上軍が写っており、キエフ戦を念頭に置いた可能性がある。
ホイニキ(地図②)
2月25日にベラルーシ南部のホイニキを撮影した米衛星運用会社マクサー・テクノロジーズの衛星写真では複数のヘリコプターが確認できる。マクサーは近くの道路に8キロ超にわたって90機以上のヘリコプターが駐機していると分析する。米国防総省高官は25日、記者団に対して、ウクライナ周辺に集まったロシア軍のうち約3分の1がウクライナに入ったと指摘した。ロシア軍は余力を残している公算が大きく、衛星写真で見えるヘリ部隊もその一部とみられる。
同じ日にホイニキを撮った別の衛星写真では、車両のような大量の装備が集結している。マクサーによると写っているのは展開中の地上軍で、ベラルーシ南部では150機近くの攻撃・輸送ヘリや大規模な地上軍の存在が確認できたという。ウクライナの首都キエフまでの距離は160キロ足らずだ。
ボリショイボコフ(地図③)
25日にベラルーシ南部のボリショイボコフ飛行場を撮影したマクサーの衛星写真にもヘリコプターと装備が写っている。マクサーは同飛行場で兵士と装備に加えて50機以上のヘリコプターが確認できたとしている。
キエフからは市民の退避が続いている。米衛星情報会社オービタル・インサイトがスマートフォンなどの位置情報から計算したキエフ周辺の推計人口は、侵攻前は540万人前後だったが、侵攻当日の24日午後10時には約400万人まで急減。その後いったん減少は落ち着いたが、翌日朝から再び流出し始め、25日午後3時には侵攻前の4割減の330万人まで減った。ただ、18歳から60歳までの男性は出国を禁じられており、女性や子どもを退避させる一方、市内に残って抵抗を試みる人も少なくないとみられる。
マクサーなどの衛星写真では、ルーマニアなど西側国境の検問所に国外に逃れようとする市民らの車が集まり、長蛇の列をつくっている様子がうかがえる。
編集
佐藤賢、朝田賢治、伊地知将史、山田剛
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