阿佐海岸鉄道を走るDMV。
徳島と高知をまたいで走る阿佐海岸鉄道が、線路も道路も走れるDMV(デュアル・モード・ビークル)を去年12月に導入しました。DMVの本格的な営業運行は世界初とのこと。赤字続きだったローカル線を生まれ変わらせ、地域活性化の切り札として生かす取り組みを取材しました。
海沿いを走る青色のバス。一見、普通のマイクロバスのようですが、向かった先にあったのは、鉄道の線路です。線路のレールの上にバスがそのまま入っていきます。よく見ると、タイヤの前に別の車輪が出てきて、バスから鉄道に早変わりしました。その間わずか15秒です。
実はこの車両、道路と線路の両方を走れるDMV(デュアル・モード・ビークル)と呼ばれる乗り物です。昨年12月、徳島、高知の第3セクターが運営する阿佐海岸鉄道がDMVを導入しました。本格的な営業運行は世界初だといいます。
徳島と高知をまたいで走る阿佐海岸鉄道は30年前に開業。わずか3駅、全長8.5キロの小さな路線でした。最盛期には年間17万人いた乗客は、人口減少などで4万人に減り、赤字が続いていました。そこで、乗客を増やすために目をつけたのが道路と線路を走るDMV。今までの鉄道路線に加え、バスで走る新たなルートを開設。さらに土日祝日は、徳島と高知の室戸半島を往復します。
DMVは、トヨタ製のマイクロバスを改造。鉄道用の重い車輪を装備するため、ボンネットの骨組みは手作りです。阿佐海岸鉄道はディーゼル車両を引退させ、DMVを3台導入しました。総額16億円のプロジェクトです。巨額の投資に見合うリターンが期待できると事業責任者である阿佐海岸鉄道の井原豊喜専務は話します。
「この地域を変えるチャンス。世界初の乗り物がこの田舎で発進する。話題性で集客効果が狙えると思っています」
地元も期待を寄せる
DMVの車体を模したもなか。
阿佐海岸鉄道の走るエリアは、山あり海ありの自然の宝庫。しかし、交通アクセスが悪く、その魅力は知られていませんでした。DMVを目的に観光客が来れば、地域の魅力も知ってもらえると認知度アップを狙います。
地元も期待を寄せています。徳島・海陽町にある老舗の菓子店「山田宝来堂」では、新商品を開発していました。箱の中に入っていたのは、DMVの車体を模したもなかの皮とつぶあん。これを自分で組み立てて食べるというユニークな商品で、バスから鉄道モードへの変化も再現しています。
「世界初を画期的なものが来る。それに乗っかり、地域が潤えばいい」(山田宝来堂の山田直人社長)
1月、徳島にあるDMVの停留所を訪れると、DMVを体験しようと、全国から客が訪れていました。バスから鉄道へ切り替わる間、車内には阿波踊りのお囃子が流れます。
あっという間にモードチェンジが完了し鉄道として走行。乗客たちは線路の旅を楽しみながら、高知県へ。再びバスに切り替わり、地元の名産品を販売する「海の駅 東洋町」に到着。水揚げされたばかりの新鮮な地魚が並び、高知特産のカツオもズラリ。あのDMVのもなかを手に取る観光客の姿もありました。阿佐海岸鉄道はDMVによる地元への経済効果は年間2億円以上あると試算しています。
バスは海の駅を出て、再び徳島へ。海沿いにある「道の駅 宍喰温泉」に向かいます。ここでの目玉は道の駅の隣に建つホテル「リビエラししくい」。客室から太平洋を一望することができます。今後は自慢のオーシャンビューと天然温泉、そしてDMVを堪能できる宿泊プランを検討しているといいます。
「DMVへの認知がまず最初ですが、『今度は魚釣りをやりたい』『キャンプをやりたい』など、そこへ行ってプラス何かがあれば、客はリピーターになると思う」(ホテルリビエラししくいの濱田紀州臣総支配人)
足元の乗車率は約5割。コロナの感染拡大の中でのスタートとなりましたが、二刀流DMVは地元の期待を乗せて走ります。
※ワールドビジネスサテライト
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