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Saturday, June 5, 2021

非常時の車両待避用 - 読売新聞

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 山陽新幹線の姫路駅ホームは通過用の上下線を挟み、東京方面の上りホームは11番の一つに対し、博多方面の下りホームは12番、13番と二つある。しかし、13番ホームが使われているのを見たことがない。そもそも下りだけ、なぜ二つのホームが作られたのだろうか。(北野浩暉)

 まずJR西日本の新幹線鉄道事業本部に電話した。「13番ホームは午前7時15分発の博多行きこだま839号と、午後11時16分発の岡山行きこだま881号の1日2本で使われ、非常時には折り返し運転の場所になります」と説明を受け、撮影に赴いた。

 しかし、記者が姫路駅を訪れた3日間は12番ホームから発車した。「なぜ話と違うのだろう」。改めて聞くと「その時のダイヤ事情などで変わる場合もよくある」。

 それなら、13番ホームは何のためにあるのだろう。

 「線路や車両の補修、事故など非常時に必要な待避場所として作られたのです」と当時の状況を語ってくれたのは、元国鉄常務理事でJR東海の初代社長を務め、現在は相談役の須田寛さん(90)だ。

 須田さんによると、東海道新幹線と山陽新幹線の発着がある新大阪駅は運転本数が多く、列車を止めておく余裕がない。岡山駅までの中間にあたる新神戸駅に待避場所を作りたいが、駅の両側がトンネルに挟まれて難しい。西明石駅は在来線と交差し工事費がかかり、相生駅は岡山駅に近すぎる。

 ゆえに、在来線と並行して、場所に余裕がある姫路駅に、待避場所が作られたのだという。「いざという時の線路にゆとりを作りたいという趣旨で、ホームとして整備したわけではない」と強調する。現在、なかなか13番ホームが使われないのも納得だ。

 一方、博多まで全通(1975年3月)させる際には「夜行新幹線」も議論されたという。「山陽新幹線技術基準調査委員会報告」(66年)などでは、▽東京から博多まで10時間かかり、夜行列車が必要▽線路保守などに最大6時間かかる▽単線に両方向の列車を走らせる場合、行き違い箇所が4か所必要――と指摘。午後9時から翌朝9時までに東京―博多間で上下各12本の運行を想定した。

 須田さんは「計画は騒音や収支の問題などから早々に断念された」と振り返る。深夜、ホームに新幹線を停車させた場合、旅館業法に対応させる必要があり、公衆衛生や警備の問題が立ちはだかったという。

 現在、新型コロナウイルスの影響で乗客数は大きく落ち込むが、須田さんは「当時と最高速度は違うけど、コロナ禍が収まり、乗客が増えれば夜行新幹線の議論も出てくるかもしれないね」。記者もにぎわいが戻り、さらに夢の新幹線が走るのを見たいと思う。

県内新幹線停車駅

 須田さんからは、非常時の運転回復などにゆとりを持たせるため、約20~30キロと短い距離ながら、新神戸、西明石、姫路、相生の4駅ができたとも教えられた。

 鉄道ジャーナリストの梅原淳さん(56)は「現在、西明石駅や相生駅は待避場所としても重要な役割を果たしている」と語る。なければ、「のぞみ」など通過列車の運行にも支障が出たと考えられるといい、「新大阪から九州に乗り入れる『みずほ』や『さくら』の本数は大幅に少なくせざるを得なかったでしょう」と話す。

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