2人の男がクリスマス・イブに仕掛ける、壮大なサプライズ。しかし、それは日本中を震撼させる前代未聞の計画だった…! 人気作家・行成 薫のデビュー作にして、哀しき男たちの生きざまを描いた傑作『名も無き世界のエンドロール』。『キサラギ』『ストロベリーナイト』の佐藤祐市監督の手によって実写化された本作は、サスペンス、ミステリー、ハードボイルドなどエンターテインメントの粋を集めた、見応えある一篇に仕上がっている。
今回「WHAT’s IN? tokyo」には、そのメインキャストを務めた岩田剛典・新田真剣佑・山田杏奈の3人がそろって登場。本作の宣伝稼働における唯一のスリーショット取材は、撮影時のエピソードから「エンドロール」にまつわる話まで、多岐に渡る鼎談となった。
取材・文 / 平田真人 撮影 / 増永彩子
3人でカラオケするシーンが初日だったことで、一気に距離が近くなった気がする。(岩田)
お三方が顔を会わせるのは、久しぶりだそうですね。
岩田 そうですね、「3人そろって」というのは久しぶりです。劇中でも3人が同じ画角におさまっているのは、カラオケのシーンとファミレスで一緒にいるところと…あとは海辺でのシーンぐらいしか実はないんですよね。こうして3人で取材を受けるのも初めてだっけ──?
新田 3人で、というのは初めてじゃないかな? 貴重ですね(笑)。
今回、お三方は幼なじみで互いを無二の存在と思っている関係性の役でした。現場ではどのような雰囲気でしたか?
新田 幼なじみという設定だったので、初日からフランクに接させてもらいました。
岩田 現場のいい雰囲気がそのまま画面ににじみ出たらいいな、と思って。特にまっけん(新田)と僕──マコトとキダは小学生の頃から無二の親友という設定だったので、いかに現場で2人の関係値を築いていくかということを、僕も入る前から考えていました。もっとも、初日から連絡先を交換したり、本当にアッという間に打ち解けて、朗らかでいい空気のまま現場が進んでいきました。
山田 実際には、岩田さんと新田さんよりもだいぶ年下なんですけど、私がお二方とご一緒したシーンは高校時代のエピソードがメインだったので、“幼なじみ感”をどう出していくかを、(佐藤祐市)監督とも擦り合わせながら演じました。でも、私が演じたヨッチがキダとマコトと同い年に見えるのは、お二方の力がすごく大きかったなと思っているんです。私は現場で、ただ楽しくお芝居をさせていただいたという感覚でしたから…。こういう言い方が正しいかわからないですけど、お二方とも本当にプロフェッショナルだなって──(笑)。
岩田 面と向かっていわれると、くすぐったいね(笑)。
山田 ですよね(笑)。お芝居をしている以外の時間は「先輩」としてお二方と接していたんですけど、お芝居に入ると自然と同い年としてお話することができたんですよね。それは、岩田さんと新田さんが常にフランクな空気をつくってくださっていたからだなって。そういう現場でのたたずまいに、プロフェッショナルを感じました。
岩田 杏奈ちゃんはめちゃくちゃ褒めてくれたけど、特に「やりやすくしてあげよう」みたいに意識したわけでもなくて(笑)。でも、変な緊張感みたいなものは現場に持ち込みたくないなとは思っていたかな。それに撮影の初日が3人でカラオケをするシーンだったから──。
新田 そうそう、あれは大きかった。
岩田 あのシーンから入れたことで一気に距離が近くなった気がしています。
新田 マコトはすごくイタズラ好きで元気なヤツなので、僕としてはそういったところでの雰囲気づくりを大切にしました。マコト自身の持っているエネルギーを芝居にも持ち込むことで、現場も明るい雰囲気になればいいなと。でも、実際に3人でお芝居をしてみたら自然といい空気が生まれてくる現場だったので、僕としてもすごくやりやすかったですね。
キダ、マコト、ヨッチの仲がものすごく良かったからこそ、ラストに“効いて”くるんです。(新田)
そのキダ、マコト、ヨッチの無邪気ながらも、絶妙なバランスで成り立っている関係性と、3人の織りなす青春の日々が終盤への布石にもなっていることを考えると、どれもが実はすごく重要なシークエンスだったように思います。
岩田 ただね、僕としては「えっ、高校生役? 大丈夫~!? 知らないよ~!」って思いましたよ(笑)。現場で制服姿になってみて、「やっぱり、これは無理があるでしょ!」って言いましたけど、周りからなだめられて(笑)。おっしゃったように、3人で一緒に過ごした時期を下地に物語が展開していくので、僕の個人的な感情は問題じゃないんです。映像的にも、キダとマコトが東京に出てきて再会してからのパートというのは、撮り方とかカラコレ(カラーコレクター=色合いを調整する装置)も青春期パートから全部変えているんですよ。高校時代が照明を飛ばしぎみで、あたたかい感じの映像なのに対して、後半はちょっとノワール調になっていて。その辺りもふくめて、コントラストというものがストーリーの中で人の気持ちを動かす大きな要素になってくる作品だったので、そこの振り幅はしっかり意識していました。交渉屋になってからのキダと、それ以前の…ちょっとお人好しというか、なかなか自分で物事を決めきれない優柔不断さだったり、頼りどころのなさみたいなところは、しっかり分けようと。
新田 幼なじみだったキダとマコトは、ヨッチが姿を消してから別々の道を行くわけですが、久々に再会して前代未聞の計画を立てるんですけど、すごく客観的に見て、キダって何だか救われないヤツだなぁと思えてならなくて。マコト自身は、あの結末で報われたのかもしれないですけど、キダはこの先もずっといろいろと背負って生きていかなきゃいけない。それを考えると、何だかツラいなぁと…。
山田 ヨッチとしては…自分とキダ、自分とマコトとの関係性もそうですけど、何より3人の関係性を大事にしていたというのがカギだったなと思います。キダが言うように、高校時代の日々は「3人でできている世界」なので、楽しそうに見えれば見えるほど後半へのストロークになっていくんですよね。そのことを考えつつ、3人が織りなす世界観の中でヨッチが魅力的な子に映ったらいいな、と思っていました。
3人がファミレスでワイワイとしながらナポリタンを食べることも、無意味なようでいて意味をなすという。いろいろなところで種蒔きがしてありますよね。
岩田 そうですね。何気ないシーンにおいてこそ、3人の関係値──絆というものを表現できていなければ、ストーリーが始まっていかないので。そこは各々、意識していたと思います。
そういう意味では、海辺でのシーンも“効いて”いますよね。
新田 そう、3人の仲がものすごく良かったからこそ、ラストに“効いて”くるんです。
岩田 あのシーン、実は1日で全部撮り切っているので、最後の方とか陽が落ちてきちゃって。日没ギリギリだったんだよね(笑)。
山田 なかなか綱渡りなタイミングでした(笑)。
いつもの自分の出演作とはちょっと違った目線で見ることができて、すごく新鮮な感覚でした。(山田)
そういう切迫感を感じさせない映像になっているのは、佐藤祐市監督の手腕によるところもあるかと思います。そういえば、キダとヨッチがちょっと切ない会話を交わす交差点のシーン、道を挟んで話すというのは佐藤監督のアイデアだったそうですね。
岩田 そうなんですよ。現場に行くまでは、もっと近くで話すお芝居をイメージしていたので、「えっ、道を挟むんですか!?」って驚きました。でも、その場のシチュエーションを生かしたり、わいてきたアイデアを瞬時に具現化していくのが佐藤監督は好きみたいで。それをカタチにしていくのも楽しかったですね。
新田 監督は「とりあえず、何か思いついたことがあったら、やってもらえる?」って聞いてくるんです。で、やってみせると「お、いいねぇ」って(笑)。そうやって言ってもらえるうちに、どんどん「監督に協力したい」って思うようになっていくんです。役者をノせるのがうまいんですよね。声が大きくて元気なので、こっちも元気になれるし。すごくいいエネルギーをもらいましたけど、ある意味ものすごく変態でもあるなって(笑)。
岩田 あ、それは間違いないね(笑)。
詳しく聞かせていただけますか(笑)?
新田 監督と会ってみたらわかると思います(笑)。
岩田 とにかく面白い人ですよ、佐藤監督は(笑)。
新田 いまだに“少年”なんですよね。遊び心がすごくあるし、いつもニヤニヤしていて(笑)。
岩田 確かにニヤニヤしてたね(笑)
山田さん、佐藤監督はニヤニヤしていましたか?
山田 ニヤニヤしてました(笑)。あと、私は冗談なのか何なのかよくわからないことを、よくサラッと言われてました。それに対する返しがうまくできなくて、最初の方は、ディレクションとして言ってるのかと思って「え、本当にやるんですか!?」って真面目に返しちゃったんです。
岩田 あ〜、わかるわかる。画がイメージできた(笑)。普通にギャグを言ってきたり、妙なタイミングでボケたりするんですよ、監督。慣れてくると「何言ってんすか!」ってツッコめるようになるけど、最初は戸惑うのも分かる。
新田 「エッヘッヘッヘッヘ」とか変な笑いを入れてきたりね(笑)。
岩田 それそれ(笑)。ツッコむと、うれしそうなリアクションが返ってくるよね。
佐藤監督のほかの作品の現場を取材したことがあるんですけど、やっぱり明るい印象が残っています。
岩田 ものすごく気づかいをなさる方でもあって。現場が明るいのは、佐藤監督のお人柄によるところが大きいと思います。よし、いいこと言った(笑)!
フォローありがとうございます! ちなみに、この作品は撮影が2019年の夏ごろと…1年半くらい前になるんですよね。
岩田 結構、長いこと寝かせて熟成させました(笑)。
新田 でも、完成した映画を見たら、ものすごく面白くて。DVDにしてもらったんですけど、家で2回見ました。それくらい面白かったなぁ…。ストーリーがいいですよね。どうなっていくのか展開が読めないですし。今まで自分があんまり出会ってこなかったタイプの作品だったこともあって、素直に見入ることができました。
山田 私は後半部分の現場にいなかったので、その後のキダとマコトの姿を見たのは、初号試写が初めてでした。撮影からかなり日が経っていたというのもありますけど…物語の展開に驚いたり、引き込まれていったり、「うわ~」っていう気持ちになったり──自分が出演している作品ながら、素直に楽しむことができて。ストーリー構成の巧みさもそうですし、キダとマコトの高校時代からの変化を、いつもの自分の出演作とはちょっと違った目線で見ることができて、すごく新鮮な感覚でした。
岩田 僕は、脚本が全部(頭の中に)入っているから、なかなか客観視するのは、やっぱり難しかったです。でも、この入り組んだストーリーを映像になさったスタッフのみなさん、編集して仕上げた監督の手腕に改めて敬意を抱きました。初号(試写)が終わって、試写室を出たところで杏奈ちゃんと中村アンちゃんと顔を会わせたんですけど…3人とも言葉が出てこなくて。つまり、とてもひと言では言い表せない、そういう映画なんだなって思ったんですよね。今こうして宣伝でお話させてもらっていますけど、「ひと言で見どころを」と質問をされるたびに、困った覚えがありますから…。ひと言では語れないんですけど、エンドロールが流れた後もなかなか席が立ち上がれないような余韻もふくめて、人の心に訴えかけるメッセージのある映画になっていると思います。僕は逆に、映画館にお越しいただくみなさんがどんな感想を抱かれるのか、興味がありますね。
ご覧になった方々が、SNSなどで盛り上がることを願っております。最後に…「エンドロール」に掛けまして、お三方は映画館で鑑賞する際、「エンドロールのエンドまできっちりと見る派」ですか?
岩田 どうだろう? 作品によりますかね。余韻に浸りたい時はもちろん見ますけど、「気づいたらエンドロールまで見ていた」というのが理想形です。無意識にそうさせるのが、いい映画なのだろうな、と。
新田 僕もそう。だから、見る人をエンドロールが終わるまで動けない状態にしたいですよね。
岩田 そうだね。
新田 ある種、放心状態に。
山田 役者としては理想ですよね。私自身は、結構エンドロールの最後まで見ることが多くて。時々、エンドロールの後にワンシーンだけ足されている作品があったりするじゃないですか。それを見逃すと、何だかすごく損した気持ちになりそうなので…見ます(笑)。
岩田 まっけんが言ったように、作品に力があれば自然と客電が点くまでスクリーンを凝視すると思うし、『名も無き世界のエンドロール』が、見る人たちにとってそういう体験ができる映画になっていればいいな、と願うばかりです。
映画『名も無き世界のエンドロール』
1月29日(金)全国ロードショー
出演:岩田剛典 新田真剣佑 山田杏奈 中村アン 石丸謙二郎 大友康平 柄本 明
原作:行成薫「名も無き世界のエンドロール」(集英社文庫)
監督:佐藤祐市
制作プロダクション:RIKIプロジェクト、共同テレビジョン
配給:エイベックス・ピクチャーズ
オフィシャルサイト
www.namonaki.jp
©️行成薫/集英社 ©️映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
からの記事と詳細 ( 岩田剛典・新田真剣佑・山田杏奈の紡いだ絆が、『名も無き世界のエンドロール』の深度に直結する! - WHAT's IN? tokyo )
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