故障に強く、車内は快適に
このような思想から生まれたE233系のコンセプトは、「故障に強い車両」「人に優しい車両」「情報案内や車両性能を向上した車両」「車体強度の向上」の4点です。
まず、主要機器については、バックアップの搭載や系統の二重化を図り、万一の故障に備えました。
目につきやすいところでは、予備のパンタグラフやワイパーが搭載されています。その他、制御装置や保安装置、補助電源装置などは回路を二重化。コンプレッサーは、4~8両編成では編成中2台、10両編成では3台と、E231系以前よりも編成あたり1台増加しました。電動車も、10両編成では6両に増えています。
これらのバックアップ機器の確保により、通常使用する機器・回路が故障した場合でも、運転の継続や自走回送が可能となっています。
モーター出力も、従来車両より向上しました。
209系とE231系に搭載されたMT68形・MT73形は、短時間であれば定格以上の性能を発揮できる交流モーターの特徴を生かし、1時間定格出力は95kWという控えめな数値となっていました。なお、209系と同世代であるJR西日本の207系は、0番台では同155kw、2000番台では同220kwのモーターを搭載しています。
E233系では、常磐線用に製造されたE531系と同じ、MT75形を採用しました。このモーターは、1時間定格出力を140kWと、従来機種よりも性能を大幅に向上。さらに騒音の低減も図っています。従来機種でも時速120キロ運転が可能な性能はありましたが、出力を向上することで、車両性能に余裕を持たせることができました。
電動車の増加とモーター出力の増強によって、車両性能も向上しました。性能の設定は投入路線によって異なりますが、中央線用の0番台では起動加速度が時速3.0キロ毎秒と、山手線用のE231系やE235系と並んで、JR東日本の地下鉄直通車両以外では最も高い加速性能を発揮。この性能が従来車両よりも向上したことで、中央線では所要時間の短縮を実現しました。
なお、E233系の最高運転速度は時速120キロとなっており、近郊タイプの3000番台と埼京線用の7000番台が、この速度で運転しています。
車内設備も、従来車両よりグレードが上がっています。腰掛幅は460ミリに拡大され、クッションも柔らかいものに。化粧板は、E531系に引き続き、白を基調とした明るいものを採用。さらに優先席付近では化粧板や床面の色を変え、優先席エリアの明確化を図りました。
また、山手線用のE231系500番台と同様に、ドア上には液晶ディスプレイを設置(3000番台を除く)。停車駅や運行情報の案内、ニュースや天気予報などのコンテンツ提供が、画面でできるようになりました。この液晶ディスプレイは、0番台では画面比率が4:3となっていましたが、京浜東北線用の1000番台以降では16:9となり、解像度も向上しています。
このほか、車外の行先表示器は、JR東日本では初めてフルカラーLEDの製品を採用。表示可能色が大幅に増え、従来車両よりも視認性が向上しました。
そして、車体の設計にもメスが入れられています。
2005年に福知山線で発生した脱線事故を受け、衝突事故発生時の安全性を高めるよう、車体側面が強化されました。
また、E233系では地下鉄直通車を除き、全番台が衝撃吸収構造を採用。踏切などでトラックのような障害物と衝突した場合にも、あえて破壊する部分を設けることで衝撃を分散し、乗務員の生存率を高める「クラッシャブルゾーン」の概念を採用することで、安全性を確保しました。
この衝撃吸収構造とクラッシャブルゾーンの組み合わせは、E231系の近郊タイプや横須賀・総武快速線用のE217系でも採用されていましたが、京浜東北線のように、主に都市部を走る車両も含めて全面的に導入したのは、E233系が初めてのことでした。
209系やE231系、後のE235系では、量産車の投入前に試作車や量産先行車を製造し、TIMSやINTEROSといった新技術を本格導入前にテストしていました。一方、E233系の場合、最初に落成した編成から間を置かずに2本目以降が落成しており、新技術のテストを兼ねた長期の試運転はありませんでした。
E233系では、TIMSの採用やメンテナンスフリー化の推進といった部分は、E231系と同じ思想の基に設計されています。つまりE233系は、E231系の質を高めた、マイナーチェンジ車両であるとも言えるのです。
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June 03, 2020 at 05:10AM
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